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陳守娘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
台南孔子廟節孝祠中国語版にある陳守娘の位牌[1][2]

陳 守娘(ちん しゅじょう[1][2]、チェン ソウニャン[3])は、台湾妖怪[1][2]。非業の死により怨霊となった清代の女性。「台湾最強の女幽霊」と呼ばれる[1][4][5]

物語

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清代の台湾道光末期(1850年ごろ)[1]台南の街に陳守娘という女がいた[1]。陳守娘は、夫の林寿(りんじゅ)に早逝され、若くして未亡人となった[1]

陳守娘の美貌に目をつけた役人(師爺)は、林寿の母と妹(陳守娘の姑と小姑)に賄賂を贈り[1]、陳守娘を身売りさせようとした[5]。陳守娘が貞節のためこれを拒むと[3]、姑と小姑は陳守娘を虐待し[5]、陳守娘は憤死してしまった[1]

陳守娘の死後、民は事件を知ると、役所に公正な裁きを期待したが、知県王廷幹中国語版は事件を隠蔽しようとした[1]。激怒した民が暴動を起こすと、姑と小姑は死罪となったが、師爺は大陸に逃亡してしまった[1]

陳守娘は怨霊となって師爺を殺した後、青い光となって台南を飛び回り[1][2]、民に災いをもたらした[5]。民が永華宮広沢尊王中国語版民間信仰の神)に助けを求めると、広沢尊王は赤い光となって戦ったが、決着は付かなかった[1][6]。すると観音菩薩が現れて仲裁し、陳守娘は節孝祠中国語版に祀られることになり、災いは止んだ[1]

背景

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物語は多分にフィクションを含むが、もとになった事件は実際にあった可能性が高い[1][2]王廷幹中国語版が実際に関わったかは不明だが、王廷幹は民に評判が悪かったため、この役をあてられたとも考えられる[1]

資料として、劉家謀中国語版『海音詩』(1855年)、連横中国語版台湾通史』(1920年)、相良吉哉臺南州祠廟名鑑中国語版』(1933年)などがある[6][7]。資料によって細部が異なる[1][6]

陳守娘の物語は、当時の女性の社会的地位の低さを反映している[2][5][6]中国の女性史)。同様の女性の物語として林投姐の物語がある[2]

日本統治時代から戦後の台湾では、楊秀卿中国語版のような盲目の女性月琴奏者が、陳守娘の物語を弾き語っていた[1]

現代の受容

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2020年、陳守娘を題材にした漫画『守娘』(小峱峱作)が、台湾の漫画賞「金漫獎中国語版」新人賞を獲得した[8]。2023年、KADOKAWAから日本語訳が刊行されている[4]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 何敬堯中国語版 著、甄易言 訳『図説 台湾の妖怪伝説』原書房、2022年。ISBN 978-4562071845 168-174頁。
  2. ^ a b c d e f g 何敬堯中国語版 著、出雲阿里 訳『台湾の妖怪図鑑』原書房、2024年。ISBN 978-4562074068 144-145頁。
  3. ^ a b 伊藤龍平「傘をさす幽霊―台湾の怪談いま・むかし―」、朝里樹『世界現代怪異事典』笠間書院、2020年。ISBN 978-4-305-70925-7。334頁。
  4. ^ a b 『守娘』『スクールバック』『ドラQ』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 7月のおすすめ新刊漫画”. Real Sound|リアルサウンド ブック (2023年8月1日). 2025年11月4日閲覧。
  5. ^ a b c d e 台湾で出会う 無縁仏供養―― 「有応公」信仰の 歴史と意義” (中国語). 台湾光華雑誌 Taiwan Panorama | 国際化、二カ国語編集、文化整合、世界の華人雑誌. 2025年11月4日閲覧。
  6. ^ a b c d 小峱峱『守娘 下』KADOKAWA、2023年。ISBN 978-4046826268 Kindleの位置No.134;174
  7. ^ ウィキソースのロゴ 中国語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:臺灣通史/卷35#陳守娘
  8. ^ 臺灣漫畫家專訪-小峱峱 - 臺灣漫畫基地” (中国語). www.tcb.tw. 2025年11月4日閲覧。