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群論において、群の要素に対して表現行列の対角和(トレース)を与える写像を指標(しひょう)と呼ぶ。与えられた群について、その全ての既約表現の指標を表にまとめたものを指標表(しひょうひょう)という。
化学・結晶学・分光学において点群の指標表は、対称性の観点から分子振動を分類したり、2つの量子状態間の遷移が可能かどうかを考える場合に用いられる。
性質
以下では群とは有限群のことを指す。
群 G の既約指標のなす集合を Irr(G) とおく。
群 G の元 g に対して gG は共役類、
CG(g) は中心化群を表す。


- 群の位数は既約指標の次数の二乗和に等しい:
(直交関係の特別な場合。)
- 群の既約指標の数と共役類の数は等しい。
- 線型指標―すなわち χ(1) = 1 なる指標χ―の数は交換子群の指数と一致する。
- 既約指標χの次数 χ(1) は群の位数を割り切る。
- 群の正規部分群のなす束がわかる。より正確に述べると、群 G のすべての正規部分群は既約指標の核
のいくつかの共通部分で表せる。
- 群の単純性を判定できる。(直前の性質から正規部分群についてわかるため。)
具体例:点群C2vの指標表
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| Tz |
z , z2 , x2 , y2
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| Rz |
xy
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| Ty , Rx |
y , xz
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| Tx , Ry |
x , yz
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References
- Alperin, J. L.; Bell, Rowen B. (1995), Groups and representations, Graduate Texts in Mathematics, 162, Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-387-94525-5, MR1369573
- James, Gordon; Liebeck, Martin (2001). Representations and Characters of Groups (2nd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0-521-00392-X