比例代表制
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比例代表制(ひれいだいひょうせい)は、現代議会制民主主義の代表的な選挙制度の一つ。
概要
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比例代表制は、政党の得票率に比例して議席配分を決定する(または得票率に比例して候補者の当選順位を決定する)選挙制度である。このため政党名簿を用いる方式(政党名簿比例代表)が一般的だが、単記移譲式投票等の、政党名簿を用いず候補者個人を選択する制度も、比例代表制として認知されている([1])。対立概念としては多数代表制がある。
相対多数派を優遇し死票を大量に発生させる「小選挙区制」または「多数代表制」の対極にあり、有権者の民意を最大限正確に立法府に反映させる制度である。死票が少ない全国区やブロック制・道州制のような大選挙区が前提になるので、一票の格差による定数是正の必要が比較的少ない。
小選挙区多数代表制が大政党、特に二大政党に有利な選挙制度であるのに対して、比例代表制は第三位以下の少数派政党にもその得票率に比例した議席を与える。つまり二大政党制が必ずしも議会制民主主義の最善の形とは言えないということを前提にしている。これを政党乱立(政局不安定化)と解釈するか、より民主的な制度(専制への予防)と捉えるか、で立場が分かれる。
比例代表制への批判としては、選挙民から候補者を選べないという不満が出やすい(拘束名簿式の場合)、同じくらいの力をもつ中規模政党が複数ある場合に各政党間に政策の一致がないと政争によって政局が不安定になりうる、強力な政権を生み出しにくい、などがある。
これに対して比例代表制を肯定する立場からは、政策重視型の政治を実現できる(政党比例代表の場合)、候補者と選挙民との個人的癒着が起こりにくい(拘束名簿式の場合)、多数代表制・二大政党制は実際には絶対少数派意見に基づく専制政治をもたらす(個々にはより少数である多様な諸意見が不当に封じられる)ので比例代表制の方がシステムとして安全である、自分の意見のみを通そうという考え方ではなく話合いによって他者のことを考えて皆にとって一番いい政策は何か考えることを政権に学ばせる意味で優れた制度といえる、そもそも民意が議席に正確に反映されることは民主主義にとって最大の利点である、などが指摘される。
ただ政党内の利権や、中央進出に有利な東京出身者、二世候補者内での個人的癒着が起こりやすく、地方や弱者が見えない政治家が占める傾向になりやすいことには注意が必要である。
なお、非拘束名簿式や単記非移譲式投票(大選挙区制)または単記移譲式投票(大選挙区個人比例代表)などの方式では、比例代表制でも個人単位で候補者を選択できる。ただし政党ではなく個人を選ぶことは「候補者同士の競争が起こる」ことと表裏一体であり同じ政党の政治家の同士討ちや候補者と選挙民との個人的癒着を招く、との意見もある。逆に、同じ政党の同士討ちも「その政党を構成する政治家を選挙民が選べる」ことと表裏一体でありそれを完全に防ぐと選挙民(とりわけ政党に所属しない人々)の自由度を下げる、という意見もある。
採用している国・地域
アイスランド
アルジェリア
アルゼンチン
アルバ
アルバニア
アンゴラ
イスラエル
イタリア
イラク
インドネシア
ウォリス・フツナ
ウクライナ
ウルグアイ
エストニア
オーストリア
オランダ
カーボベルデ
ガイアナ
カンボジア
ギニアビサウ
キプロス
キュラソー
ギリシャ
クロアチア
コスタリカ
コロンビア
サントメ・プリンシペ
サンマリノ
シント・マールテン
スイス
スウェーデン
スペイン
スリナム
スリランカ
スロバキア
スロベニア
赤道ギニア
セルビア
チェコ
チュニジア
デンマーク
ドミニカ共和国
トルコ
ナミビア
ニカラグア
ニューカレドニア
ネパール
ノルウェー
パラグアイ
フィンランド
ブラジル
ブルガリア
ブルキナファソ
ブルンジ
ペルー
ベルギー
ポーランド
ボスニア・ヘルツェゴビナ
ポルトガル
南アフリカ共和国
モルドバ
モロッコ
モンテネグロ
ラトビア
リヒテンシュタイン
リベリア
ルクセンブルク
ロシア
沿革
比例代表制は、19世紀前半にトーマス・ライト・ヒルによって考案され、J.S.ミルがイギリスでの実施を訴えたことでその考えが広まった。単記移譲式投票は1857年にデンマークで初めて採用され、最古の比例代表制となっているが、デンマークでは本格的に普及しなかった。単記移譲式はイギリスで(独自に)再考案されたが、イギリス議会はそれを退けた。しかし、タスマニア州で1907年に採用されると、そこから広がっていった。単票移譲式はアイルランド共和国で1919年より使用されている。
政党名簿比例代表は、19世紀後半にベルギーのヴィクトル・ドントによって考案された。空想的社会主義者のヴィクトール・コンシデランもこの制度を1892年の著書で考案した。スイスのいくつかのカントン(1890年のティチーノ州が最初)で採用された後、ベルギーが国として初めて1900年の国政選挙で採用した。類似した制度が第一次世界大戦の間とその後にかけて多くのヨーロッパ諸国で施行された。
選挙方法
政党を立候補単位とした選挙方式
政党名簿比例代表とは、各政党が立候補者の名前を並べた「立候補者名簿」を事前に提出し、政党の得票数に比例して政党ごとの獲得議席数を決定する制度である。名簿の中の当選者の決め方については様々なバリエーションがある。なお、政党名簿比例代表では無所属の立候補は形式的に不可能であり、個人で立候補する場合は、立候補者数一人の立候補者名簿を提出する政党として申請する。
また、限られた議席を正確に得票率に合わせると小数点以下の値をもつので、得票率と議席配分率は正確に一致するとは限らない。そのため、小数点以下の値を処理する加工が必要であり、その加工方法によってさまざまな計算式(決定方法)が提案、採用されている。
詳しくは政党名簿比例代表を参照。
当選順位の決定方法
厳正拘束名簿式
詳しくは厳正拘束名簿式を参照。
厳正拘束名簿式では、立候補者名簿は順番が記載されている。有権者は政党に投票する。次に政党の得票により、まず政党の獲得議席を決定する。政党の名簿順位の上位の者から当選となる。その拘束性は100パーセントである。かつてワイマール共和国で導入されていたが、あまりに硬直的であるため、現在ほとんどの先進国で採用されていない。しかし、その分かりやすさから独裁国家から民主制へ移行した国家がしばしばこれを採用することがある。日本では参議院選挙(比例区)において1983年から1998年まで行われていた方式である(全国1つのブロックで選挙を行った)。
単純拘束名簿式
単純拘束名簿式では、立候補者名簿は順番が記載されている。条件を厳しくすれば限りなく厳正拘束名簿式に近づき、条件を緩和すれば限りなく非拘束名簿式に近づく。その拘束性は1パーセントから99パーセントまで様々である。現在では比例代表制を導入しているほとんど全ての先進国で採用されている。ドイツ、ベネルクス、北欧などである。日本では衆議院選挙(比例区)で1996年から採用されている。ただし、日本の衆院選の比例代表制の場合は、小選挙区での重複立候補が同一順位に並ぶ場合があり、小選挙区での当選者の得票数に応じた得票率(惜敗率)によって当選順位が決められる方式である。これは有権者が候補者の順位決定に部分的に参加できる方式だが、単純拘束名簿式という名称をそのまま当てはめることについては議論の余地がある。
非拘束名簿式
詳しくは非拘束名簿式を参照。
非拘束名簿式は、立候補者名簿に順位を記載せず、立候補者の得票数によって名簿順位を決定する。有権者は政党または立候補者に投票する。政党票と、政党に属する立候補者の票を合算した上で、まず政党の獲得議席を決定する。次に政党内の立候補者の得票数によって、当選者を決定する。日本では参議院選挙(比例区)で2001年から採用されている。
自由名簿式
自由名簿式では、立候補者名簿は記載されているが、有権者がそれを書き換えることが出来るのが最大の特徴である。また、名簿順に関しては政党が記載して有権者が変更できる方法と名簿に順位が無い方法とがあり、単純拘束かつ自由名簿式や非拘束かつ自由名簿式が考えられる。有権者は政党に投票する。次に政党の得票により、まず政党の獲得議席を決定する。その後に一定の方式に基づいて当選者を決定する。ノルウェーやスウェーデンにおいては、各政党が提出する複数の名簿から自分の好みに合う候補者に順位を書き換えて投票することが出来る。この個人票を集計してある一定の得票を集めれば名簿順に関係なく優先的に当選できるようになっている。[1]
議席配分の決定方法
限られた議席を正確に得票率に合わせると小数点以下の値をもつので、得票率と議席配分率は正確に一致するとは限らない。そのため、小数点以下の値を処理する加工が必要であり、その加工方法によってさまざまな計算式(決定方法)が提案、採用されている。
ヘア=ニーマイヤー式(最大剰余方式)
ヘア=ニーマイヤー式は、ドイツやスイスの比例代表制で用いられている方式である。
- まず有効投票総数を定数で割り、これを基数とする。
- 各政党の得票数を基数で割り、商を求める。
- その商の整数分だけ一旦、配分する。
- 商の整数で配分しきれなかった「残余議席」については、割り算の余り(剰余)が大きい順に議席を割り振る。
「剰余の大きい順」とするのは、「余り(小数点以下)がより大きい値が1議席により近い」という考えに基づく。
基数=「有効投票総数÷『定数+1』」とする ドループ式も存在する(イタリアで用いられている) この基数の算出は、仮に全体の議席が1議席しかない場合、2分の1を超える得票率であれば議席獲得に十分であり、同様に2議席なら3分の1、3議席なら4分の1・・・n議席なら(n+1)分の1を超える得票率が十分であるとする考えに基づく。
他にも亜流として定数+2で割る、インペリアル式が存在する。
- ヘア=ニーマイヤー式の例
議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。
| A党 | B党 | C党 | D党 | |
| 得票数 | 1500 | 700 | 300 | 200 |
| ÷基数 | 5 | 2 | 1 | 0 |
| 剰余 | 0.56(3位) | 0.59(2位) | 0.11(4位) | 0.74(1位) |
| 議席数 | 5 | 3 | 1 | 1 |
基数は(1500+700+300+200)÷10=270だから、これで割ると整数部分は5+2+1+0=8で、あと2だけ足りない。その分を剰余の大きい順から補うと、上のようになる。
この方式では、総議席数が増えたときに配分議席が減る政党が生ずる「アラバマのパラドックス」が発生する。
ハーゲンバッハ=ビショフ式
「アラバマのパラドックス」は余りの値に依存することに起因するため、別の方法で残余議席を配分する方法が模索された。
その1つの方法がハーゲンバッハ=ビショフ式であり、さらに1議席、2議席与えた場合の「1議席あたりの得票数」が大きい順に残余議席を配分する。
ドント式
日本の比例代表制選挙では、いずれもドント式(Victor D'Hondt)を用いている。
ハーゲンバッハ=ビショフ方式、ジェファーソン方式とも同じ結果になる。
この計算式は、仮に本来の比例配分をした場合(小数点以下の議席も認めた配分の場合)、1議席あたりの得票数は、一致する考えに基づく。 まず得票数を÷1、÷2、÷3…で割る。この割り算の答え(商)の多い順に議席を配分することになる。
- 例
定数10の場合において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。
| A党 | B党 | C党 | D党 | |
| ÷1 | 1500(1) | 700(3) | 300(7) | 200 |
| ÷2 | 750(2) | 350(6) | 150 | |
| ÷3 | 500(4) | 233(10) | ||
| ÷4 | 375(5) | 175 | ||
| ÷5 | 300(7) | |||
| ÷6 | 250(9) | |||
| ÷7 | 214 |
商の大きいものから順に議席数10までが当選となる。まず一番大きい1500のA党が1議席。次にA党の÷2とB党の÷1で比較するとA党の÷2が大きいので、A党が2議席。次にB党÷1が1議席。このように進め、B党÷3の233で全10議席が確定する。
最終的にはA党が6議席、B党が3議席、C党が1議席、D党は議席無しとなる。
上記の例で,仮に定数が7だった場合は,7議席目をA党がとるか,C党がとるかは(日本では)くじで決める。 (「公職選挙法」第95条3項2号:「二以上の商が同一の数値であるため・・・選挙会において、選挙長がくじで決める」。)
サン=ラグ式
ドント式では÷1、÷2、÷3と除数を1ずつ増やして議席を確定していくところを、サン=ラグ式は÷1、÷3、÷5……と除数を2つずつ増やして奇数で割って行く。
ドント式と比べると1議席増えたときの除数が大きくなる度合いが大きいため、小政党が議席を獲得し易く、特に最初の1議席を確保し易い。André Sainte-Laguë による。サントラゲと書かれる事もあるが、サンラグの方が本来の発音に近いと思われる。ウエブスター方式とも呼ばれる。
ちなみに÷2、÷4、÷6と除数を偶数で割った場合は、ドント式の商すべてを2で割った場合と同じであり、結果、ドント式と結果が一致する。
- 例
議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。
| A党 | B党 | C党 | D党 | |
| ÷1 | 1500(1) | 700(2) | 300(4) | 200(8) |
| ÷3 | 500(3) | 233(6) | 100 | 66 |
| ÷5 | 300(4) | 140(10) | ||
| ÷7 | 214(7) | 100 | ||
| ÷9 | 166(9) | |||
| ÷11 | 136 |
まず、一番大きい1500のA党が1議席。次にA党の÷3とB党の÷1で比較するとB党の÷1が大きいので、B党に1議席の次にA党に2議席。というように順々に決めると、10議席に達するのはB党の÷5の140であるので、最後にB党の3議席が確定する。
最終的にはA党が5議席、B党が3議席、C党が1議席、D党は1議席となる。
修正サン=ラグ式
修正サン=ラグ式ではサン=ラグ式で最初に1で割るところを1.4で割る。北欧各国の国政選挙で使われている。
- 例
議席数 10において、A党の得票数が1500、B党が700、C党が300、D党が200獲得したときの例で説明する。
| A党 | B党 | C党 | D党 | |
| ÷1.4 | 1071(1) | 500(2) | 214(6) | 142(9) |
| ÷3 | 500(2) | 233(5) | 100 | 66 |
| ÷5 | 300(4) | 140(10) | ||
| ÷7 | 214(6) | 100 | ||
| ÷9 | 166(8) | |||
| ÷11 | 136 |
サン・ラグ式があまりにも小政党に有利であるという批判を受けて、最初の1議席目までの条件のみを厳しくした制度である。2議席目以降はサン・ラグ式と変わらない。
クオータ式
ヘア・ニーマイヤー式と違いドント式・サンラグ式は、ある党の配分議席数が(総議席数×その党の得票率)の小数点以下切り上げを越えてしまう場合が出る。これをアラバマパラドックス無しで回避するため、ヘア・ニーマイヤー式での基数を「有効投票総数/(配分し終えた議席数+1)」にして、一議席ずつ当選者を決める毎に、あたかもその候補者が定数を埋める最後の候補者であるかのようにヘア・ニーマイヤー式の計算をする。
- 例
議席数 6において、有効投票総数6000、A党の得票数が2800、B党が1900、C党が900、D党が400獲得したときの例で説明する。
| A党 | B党 | C党 | D党 | |
| 得票数 | 2800 | 1900 | 900 | 400 |
| 0議席配分済みの時の議席数 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 得票数-(基数(=6000/(0+1))×配分済み議席数)) | 2800 | 1900 | 900 | 400 |
| 1議席配分済みの時の議席数 | 1 | 0 | 0 | 0 |
| 得票数-(基数(=6000/(1+1))×配分済み議席数)) | -200 | 1900 | 900 | 400 |
| 2議席配分済みの時の議席数 | 1 | 1 | 0 | 0 |
| 得票数-(基数(=6000/(2+1))×配分済み議席数)) | 800 | -100 | 900 | 400 |
| 3議席配分済みの時の議席数 | 1 | 1 | 1 | 0 |
| 得票数-(基数(=6000/(3+1))×配分済み議席数)) | 1300 | 400 | -600 | 400 |
| 4議席配分済みの時の議席数 | 2 | 1 | 1 | 0 |
| 得票数-(基数(=6000/(4+1))×配分済み議席数)) | 400 | 700 | -300 | 400 |
| 5議席配分済みの時の議席数 | 2 | 2 | 1 | 0 |
| 得票数-(基数(=6000/(5+1))×配分済み議席数)) | 800 | -100 | -100 | 400 |
| 6議席配分済みの時の議席数 | 3 | 2 | 1 | 0 |
この計算方法だと分母の最大が定足数になる分数を扱う可能性がある。このため普通は先の計算方法と同じ議席配分の「議席を一つ配分する度に、各党に得票数分のポイントを与え、議席を追加された党から有効投票数分の票を減らす」方法が採られる。
| A党 | B党 | C党 | D党 | |
| 得票数 | 2800 | 1900 | 900 | 400 |
| 0議席配分済みの時の議席数 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| ポイント加算 | 2800 | 1900 | 900 | 400 |
| 1議席配分済みの時の議席数 | 1 | 0 | 0 | 0 |
| A党から6000減算&各党にポイント加算 | -400 | 3800 | 1800 | 800 |
| 2議席配分済みの時の議席数 | 1 | 1 | 0 | 0 |
| B党から6000減算&各党にポイント加算 | 2400 | -300 | 2700 | 1200 |
| 3議席配分済みの時の議席数 | 1 | 1 | 1 | 0 |
| C党から6000減算&各党にポイント加算 | 5200 | 1600 | -2400 | 1600 |
| 4議席配分済みの時の議席数 | 2 | 1 | 1 | 0 |
| A党から6000減算&各党にポイント加算 | 2000 | 3500 | -1500 | 2000 |
| 5議席配分済みの時の議席数 | 2 | 2 | 1 | 0 |
| B党から6000減算&各党にポイント加算 | 4800 | -600 | -600 | 2400 |
| 6議席配分済みの時の議席数 | 3 | 2 | 1 | 0 |
この方式では、党Aの得票が減り党Bの得票が増えたのに党Aの議席が増え党Bの議席が減る「人口パラドックス」が発生する。[2]
個人を立候補単位とした選挙方式
単記移譲式投票
単記移譲式投票では、有権者は候補者リストに順位をつけて投票する。全ての票は最高順位にしたがって集計され、当選ラインを超えた候補が当選者となる。このとき、当選ラインを超えた分の票は、各票の順位にしたがって他の候補者に移譲される。この手続きを繰り返しても、当選ラインを超える候補者が定数に満たない場合は、その時点での最下位得票者を落選者として、その票のすべてが各票の順位にしたがって他の候補者に移譲される。例えば、自分の第一候補が落選した場合、あるいは第一候補が余分に大量得票をした場合、自分の票は第二位の候補の得票として票がいかされる。
一般に単記非移譲式投票では、票の分散や過剰な集中による死票の増加が問題となり、政党の戦略や有権者の得票予測に大きな影響を及ぼす。単記移譲式投票では、自動的に票の分散および過剰な集中を解消するので、このような影響が抑制される。全ての候補者の順位付けを行うのは大変なため、候補者順位を政党に委任できるオプションや、下位の順位の省略を認めたり、同順位の開票手順が加えられる事がある。最初の考案者 Thomas Hare の名をとってヘア・システムとも呼ばれる。さらにヘア・クラーク式、グレゴリー式などに細分される。アイルランド、マルタ、オーストラリア上院で用いられている。
歴史的には単記移譲式投票を単数選出に適用したのがIRVだが、古典的な単記移譲式投票は、単数選出で用いられるIRV(Instant-runoff voting、優先順位付連記投票)を拡張したものと見做せる。一方、単数選出の方法には、シュルツ方式やApproval votingなどIRVよりも性質が優れたものが沢山ある。そこで、単記移譲式の概念をIRV以外の単数選出制度にも適用することで、古典的な単記移譲式よりも優れた比例代表制を構成する試みがなされている。
累積投票
累積投票制度では、投票者はその票の価値の好きな割合を候補者に対して投じることができる。完全な比例代表制ではないが、少数派の選出が可能になる。コーポレートガバナンスにおいて用いられることがある。巨大な票占有率を持つ組織票と違い一人分の持ち票では、死票が出ないよう候補者の得票率を均等にすることは不可能なので、票の価値を分割せず単一の候補に投ずるのが合理的な戦略投票になり、単記非移譲式投票に帰着される。
単記非移譲式投票
比例代表制の範疇には入れず、単に個人比例代表制の上位概念である大選挙区制に区分される。単記非移譲式投票では名簿の概念は存在せず、政党の候補者は無所属の候補者と同様に立候補する。有権者は、自分の票が死票になったり余ったりしないよう、自分の好みに合う候補者のうち当落線上にいる者に投票し、当選・落選が確実な候補への投票を避けるとされる。この戦略投票のため、当選者間に票が等しく配分されるとする意見もあるが、特に投票指示を受けない一般投票者にとって情勢判断は容易ではないため、組織票以外の浮動票を当てにする政党では「票割り」に失敗して得票の偏りが生じる現象も少なからず発生した。また情勢報道のさじ加減により左右される余地も大きい。日本では地方議会議員選挙および参議院選挙(選挙区)において採用されている。また、かつては参議院選挙(全国区)および衆議院選挙(中選挙区制)において採用されたことがある。なお中選挙区制とはかつての衆議院の選挙制度を指す固有名詞的な呼称で、理論的には大選挙区制と変わらない。
部分的な比例制
小選挙区比例代表併用制
小選挙区比例代表併用制は広い意味での比例代表制であり、小選挙区併用型比例代表制と呼ばれることもある。選挙区で獲得した分だけ名簿比例代表の議席を失うので、小選挙区比例代表並立制に比べ、比例性の強い選挙制度である。
しかし、比例代表の配分議席を負数にまで補正することは出来ないので、比例代表の議席数を越えて多くの議席を選挙区から獲得した政党は、越えた分だけ比例配分より多く議席を得てしまう。特に、比例代表で配分される議席数が0である、無所属や所属政党を選管に届け出なかった選挙区候補の議席は、全てが比例配分の枠外となる。比例代表議席の没収では補正し切れなかった議席は超過議席と呼ばれる。
小選挙区制
小選挙区制は多数代表制の代表例であるが、個人を立候補単位とした比例代表制でもある。この制度では、居住地域、職能・職域のような何らかの属性に注目し、その属性が似ている主権者を集めることで、一議席分の「政党に当たるモノ」を構成する。こうして出来た「政党に当たるモノ」は選挙区と呼ばれる。一票の格差を抑えるように選挙区の区割りが為されていれば、注目された属性については確実に、主権者の分布に比例した議席配分が行われる。その分、他の注目されていない属性については比例配分が殆ど成り立たなくなる。この方法の下で、イギリスの地方小政党が議席を得られるのは、この方式が持つ地域代表の比例配分の性質に依る所が大きい。
区割りの効果
大抵の選挙制度では、政党の獲得議席数は有理数ではなく自然数であり、選挙区定数を越える数の政党は選出されない。
よって、選挙区定数が小さいほど、名簿式比例代表制では得票率を議席数に変換する時に生じる丸め誤差が大きくなる。同時に、選出された政党は最低でも一議席は奪るため、個人を立候補単位とした選挙方式では開票時に生成する個人政党の数は選挙区定数と等しくなり、定数が小さいと有権者の政党への分類を細かくできない。
このため、選挙区定数が小さいほど、当選者と有権者との比例性が確保しづらくなる。
阻止条項・足切り条項
小党濫立を防ぐため、得票率が基準値を下回る政党には議席を配分しないという取り決め。例えばドイツでは、全国の得票率が5%未満の政党には議席が配分されない。(ただし3つ以上の小選挙区で第1位の得票を得た政党には議席が配分される)
趣旨の通り、直接的には小政党・無所属・個人政党の得票率は切り捨てられる(直接的影響)。また、基準値に近い得票率の政党は他の政党より少ない得票率変化で大きな議席数変化が起こり、基準値を確実に下回る政党は多少の得票率変化では議席数が0のまま変化しないので、基準値ギリギリの政党への投票が行われ易くなり、基準値を下回る政党への投票が避けられる戦略投票が誘発される(心理的影響)。ドイツでは、阻止条項ギリギリの連立相手政党が条項に引っかかって議席を全て失うのを避けるため、大政党の票の一部が基準値ギリギリの政党に流れる選挙協力が見られる。デュヴェルジェの法則と同様、心理的影響は得票率の段階から働くため、得票率と議席占有率が乖離する直接的影響より発見されにくい。
日本におけるエピソード
政党名の投票
衆議院選挙で行われる比例代表選挙は政党・政治団体名でのみの投票となっている(名簿届出の個人名の投票は無効扱い)。だが、2005年9月の第44回衆議院議員総選挙に関して、いわゆる「疑問票」の扱いについて以下のような通知が行われた。
- 「新党大地」の場合は「宗男(ムネオ)新党」と書いても投票は有効。
- 「国民新党」の場合は「綿貫新党」は有効。しかしながら「亀井新党」(亀井静香、亀井久興は同党の主力結成メンバー)は無効。
- 「公明党」の「イカンザキ(神崎)公明」は「神崎の呼称ではない」ということで無効。
- 「新党日本」は「日本」「日本新党(かつて同名の政党があった)」「田中新党」と記入してもいずれも有効票扱い。
所属政党の移籍の制限
日本では2000年以降の国政選挙から、比例当選議員は所属政党が存在している場合において、当選時に当該比例区に存在した他の名簿届出政党に移籍する場合は議員辞職となることになった(公職選挙法第99条の2)。
ただし無所属になることや、当選時に当該比例区に存在しなかった新政党への移籍は議員辞職の必要はない(当選時に存在した政党であっても、自分が比例選出された選挙で該当比例区に候補者擁立しなかった政党には辞職せず移籍可能。具体的な例として、2009年衆議院総選挙でみんなの党は衆議院比例区では北海道・東北・北陸信越・中国・四国で擁立しなかったので、北海道・東北・北陸信越・中国・四国の比例当選衆議院議員は議員辞職することなく、みんなの党への入党が可能である。)。
政党が他政党の比例選出議員を議員辞職させずに入党させるため、一度解党手続きをしてから新党結成する形で事実上の政党移籍は可能である(過去に保守党が他政党の比例選出議員を入党させるために一度解党した上で保守新党を結成したのがこれに該当する)。その場合は一度解党手続きをとるために、解党前の国政選挙の得票による政党助成金が受け取れず議員数による政党助成金しか受け取れないデメリットが存在する。過去の得票数が多かったり入党議員が少ない場合は逆に政党助成金が減ってしまう可能性がある。
また、当該比例選出政党が合併した場合や解散した場合は、比例当選議員は政党移籍において議員辞職せずに移籍可能である(自由党と民主党の政党合併はこれに該当する)。
当選枠が比例候補者を上回った場合
日本ではある政党や政治団体の比例名簿の登録者を上回る当選者が出た場合、上回った議席分は次に議席が配分される他の政党や政治団体に配分される。ただし、これは選挙時に限り、補充(繰上げ)の場合は他の政党や政治団体に配分されず、欠員となる。
2005年9月の衆議院選挙において、自民党は東京ブロックで8人分確保したが、重複立候補の小選挙区当選者を除く比例名簿登載者が7人しか残っていなかった。このため、公職選挙法の規定により全員が当選した場合、次に上位を占める政党や政治団体に議席を与えることになり、社民党の候補者(保坂展人)にその1議席を「譲渡」した形になった。
2009年8月の第45回衆議院議員選挙の近畿ブロックでは、民主党の名簿登載者が2人不足した。その結果については次節を参照のこと。
小選挙区の得票不足で比例枠を失った例
2009年8月の衆議院選挙において、みんなの党は東海ブロックと近畿ブロックでそれぞれ1人、計2人分の当選枠を確保した。ところが、2ブロックの同党の候補者は全て重複立候補で、かつ当該地域の小選挙区で有効票の10%を得られなかったために、比例復活当選の資格を得ることができなかった。このため東海ブロックの議席は民主党の候補者(磯谷香代子)に割り振られ、近畿ブロックでは民主党の候補者不足(2人)もあって合計3議席が自民党(谷公一、谷畑孝)と公明党(赤松正雄)に振り分けられた。
日本における比例代表制の党派別獲得議席実績
いずれも議席獲得事例がある政党に限った。
衆議院
| 回 | 自民 | 民主 | 維新 | 公明 | みんな | 未来 | 共産 | 社民 | 国民 | 大地 | 日本 | 新進 | 自由 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 41 | 1996年 | 70 | 35 | - | - | - | - | 24 | 11 | - | - | - | 60 | - | 200 |
| 42 | 2000年 | 56 | 47 | - | 24 | - | - | 20 | 15 | - | - | - | - | 18 | 180 |
| 43 | 2003年 | 69 | 72 | - | 25 | - | - | 9 | 5 | - | - | - | - | - | 180 |
| 44 | 2005年 | 77 | 61 | - | 23 | - | - | 9 | 6 | 2 | 1 | 1 | - | - | 180 |
| 45 | 2009年 | 55 | 87 | - | 21 | 3 | - | 9 | 4 | 0 | 1 | 0 | - | - | 180 |
| 46 | 2012年 | 57 | 30 | 40 | 22 | 14 | 7 | 8 | 1 | 0 | 1 | - | - | - | 180 |
注:-は立候補しなかった場合(政党等が存在しない場合も含む)、0は立候補したが当選者がいなかった場合をさす。
参議院
| 回 | 自民党 | 社会党 | 民主党 | 公明党 | 共産党 | 民社党 | 新自由 | 新自由民主 | 二院ク | スポーツ | サラリーマン | 新進党 | 自由党 | 日本新党 | さきがけ | 福祉 | 税金 | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 13 | 1983年 | 19 | 9 | - | 8 | 5 | 4 | - | 1 | 1 | - | 2 | - | - | - | - | 1 | - | 50 |
| 14 | 1986年 | 22 | 9 | - | 7 | 5 | 3 | 1 | - | 1 | - | 1 | - | - | - | - | 0 | 1 | 50 |
| 15 | 1989年 | 15 | 20 | - | 6 | 4 | 2 | -[3] | - | 1 | 1 | 0 | - | - | - | - | 0 | 1 | 50 |
| 16 | 1992年 | 19 | 10 | - | 8 | 4 | 3 | - | - | 1 | 1 | - | - | - | 4 | - | - | - | 50 |
| 17 | 1995年 | 15 | 9 | - | - | 5 | - | - | - | 1 | 0 | - | 18 | - | - | 2 | - | - | 50 |
| 18 | 1998年 | 14 | 4 | 12 | 7 | 8 | - | - | - | 0 | 0 | - | - | 5 | - | 0 | - | - | 50 |
| 回 | 自民党 | 民主党 | 公明党 | 共産党 | 社民党 | 国民新 | 新党日本 | 自由党 | 保守党 | 改革 | みんな | たち日 | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 19 | 2001年 | 20 | 8 | 8 | 4 | 3 | - | - | 4 | 1 | - | - | - | 48 |
| 20 | 2004年 | 15 | 19 | 8 | 4 | 2 | - | - | - | - | - | - | - | 48 |
| 21 | 2007年 | 14 | 20 | 7 | 3 | 2 | 1 | 1 | - | - | - | - | - | 48 |
| 22 | 2010年 | 12 | 16 | 6 | 3 | 2 | 0 | - | - | - | 1 | 7 | 1 | 48 |
注:-は立候補しなかった場合(政党等が存在しない場合も含む)、0は立候補したが当選者がいなかった場合をさす。
参考
- ^ http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200612_671/067106.pdf
- ^ 伊藤暁・井上克司 「議席配分法に対する線形時間アルゴリズム」『数理解析研究所講究録』1375巻、2004年、85-91頁。
- ^ 同名の政党は立候補したが、組織的には別団体なので立候補していないものとした。