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顕浄土真実教行証文類

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Dharma Wheel
浄土教
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分類
大乗仏教
地域別浄土教
インド 中国 日本
主な宗旨(日本)
天台宗(天台浄土教) 融通念仏宗
浄土宗 浄土真宗 時宗
如来 菩薩
阿弥陀如来
観音菩薩 勢至菩薩
経典
浄土三部経
仏説無量寿経曹魏康僧鎧
仏説観無量寿経劉宋畺良耶舎
仏説阿弥陀経姚秦鳩摩羅什
思想 基本教義
称名念仏 末法思想
関連人物
釈尊
十大弟子
龍樹 天親
曇鸞 道綽 善導 懷感 少康
空也 源信 良忍
源空(法然) 証空 弁長 幸西 長西 隆寛
親鸞 性信 真仏 唯円 如信 覚如 蓮如
一遍 聖戒 他阿
ウィキポータル 仏教

顕浄土真実教行証文類』(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい)とは、鎌倉時代初期の日本の親鸞の著作である。全六巻からなる浄土真宗の根本聖典である。

正式な表題は『顯淨土眞實敎行證文類』と記述されている。

略称
一般には『教行信証』(きょうぎょうしんしょう)と略称する。
本願寺三世覚如以前は『敎行證』(『教行証』)と称されていた。
その他に『教行証文類』、『広文類[1]』と略称される。
宗派によっては『御本典』(本願寺派)、『御本書』(大谷派)などと略称する。
浄土真宗立教開宗の書
真宗十派(真宗教団連合)では、親鸞が『教行信証』を制作したことをもって立教開宗[2]とし、元仁元年(1224年)4月15日に草稿本が完成したとされ、4月15日を「真宗立教開宗記念日」[3]と定めている。
真跡本
坂東本』と通称される真跡本が現存する。坂東報恩寺東京都台東区)を経て、東本願寺が所蔵する。昭和27年(1952年)3月29日に、国宝に指定されている[4]。『坂東本』は、『御草本』とも通称される。
東国(関東)在住時代に草稿が完成し、最晩年まで推敲したものと考えられ、朱筆や墨で加筆した跡が随所に見られる。
『坂東本』の修復
2003年7月より2004年3月にかけて『坂東本』の修復が行われた。その際、調査を行ったところ、新たに約700ヶ所に、角筆(竹などを尖らせた筆記具。紙に凹みをつけて書き込む。)によりつけられた書き込みが発見される。その内400ヶ所は、重要箇所に注意を促す「合点」(がってん)と呼ばれる書き込み。

内容

浄土真宗の教義が極めて詳細に説かれている。 親鸞自身の文は少なく、大半が自説の根拠としての経典及び七高僧の著作からの引用である。

顕浄土真実教行証文類序
「総序」と通称され、教行信証全体の序文である。
あい難い弥陀の本願を知ることができた喜びと教行信証を起草した心情が述べられている。
顕浄土真実教文類一
「教巻」と通称される。
浄土真宗の教えには往相廻向と還相廻向が有ること、往相廻向には真実の教・行・信・証が有ること、真実の教とは「大無量寿経」であることが述べられている。
顕浄土真実行文類二
「行巻」と通称される。弥陀の第17願である諸仏称名の願の解説である。
真実の行とは無碍光如来(阿弥陀如来)の名を称する(念仏する)こと、念仏の功徳、他力とは阿弥陀如来の本願力であることが述べられている。
巻末に「正信念仏偈」(「正信偈」)と呼ばれる偈頌が置かれる。
顕浄土真実信文類序
「顕浄土真実信文類三」の前に「別序」と通称される序文が置かれる。
親鸞が真実の信心を獲得したことは弥陀の第18願によってであることが述べられている。
顕浄土真実信文類三
「別序」を含めて「信巻」と通称される。弥陀の第18願である至心信楽の願の解説である。教行信証全六巻の中で最も大部であり、最重要の巻である。
他力真実の信心とは何か、信心正因の教義、信の一念とは何か、真実の信心を獲得する者は現生に10種の益を獲ることなどが説かれている。
顕浄土真実証文類四
「証巻」と通称される。弥陀の第11願である必至滅度の願の解説である。
真実の証とは極楽に往ってに生れること、還相廻向とは何かが述べられている。
顕浄土真仏土文類五
「真仏土巻」と通称される。弥陀の第12願である光明無量の願と第13願である寿命無量の願の解説である。
弥陀の光明無量の徳と寿命無量の徳、弥陀の本願に真実と方便が有ることが述べられている。
顕浄土方便化身土文類六
「化身土巻」と通称される。弥陀の第19願である至心発願の願と第20願である至心廻向の願の解説である。
「化身土巻」は「本」と「末」からなる。「本」では弥陀の第19願・第20願が方便であること、弥陀と釈迦が第19願の教えによって群生海を誘引していること、親鸞は第19願から第20願に進み第20願から第18願に入ったこと(三願転入)、雑行雑修自力の心の有る人は極楽に往生できないこと、雑行雑修自力の心とは何か、聖道仏教は末法の時期では助からないことなどが説かれている。
「末」では経典に説かれた因果の道理を根拠に他宗教(仏教以外の宗教)の誤りを指摘している。
巻末の「竊かに以みれば聖道の諸教は行証久しく廃れ浄土の真宗は証道いま盛なり」以降の部分は「後序」と呼ばれる。

脚注

  1. ^ 『顕浄土真実教行証文類』を『広文類』(『廣文類』)と略称するのに対し、『浄土文類聚鈔』を『略文類』と略称する。
  2. ^ 立教開宗…親鸞自身に立教開宗の意思は無く、浄土真宗の宗祖(開山とも)と定めたのは、本願寺三世覚如である。
  3. ^ 「真宗立教開宗記念日」…グレゴリオ暦の4月15日
  4. ^ 国宝の名称は、「教行信証〈親鸞筆/(坂東本)〉」、種別は「書跡・典籍」、所有者名は「真宗大谷派」である[1]

参考文献

  • 親鸞 著、金子大栄 校訂『教行信証』岩波書店〈岩波文庫 青318-1〉、1957年。ISBN 4-00-333181-8 
  • 浄土真宗教学編集所 浄土真宗聖典編纂委員会 編纂『顕浄土真実教行証文類-現代語版』本願寺出版社〈浄土真宗聖典〉、2000年。ISBN 4-89416-668-2 
  • 真宗聖典編纂委員会 編『真宗聖典』真宗大谷派宗務所出版部、1978年。ISBN 4-8341-0070-7 
  • 坂東 浩 監修『うちのお寺は真宗大谷派』双葉社、2005年。ISBN 4-575-29813-1 

関連項目

  • 浄土文類聚鈔』 - 『教行信証』の要点を述べた書物。
  • 『六要鈔』 - 存覚著。『教行信証』の注釈書。

外部リンク

本願寺派聖典
大谷派版真宗聖典