Extended Resolution Compact Disc
xrcd(eXtended Resolution Compact Disc)は、ビクターが1996年に発表した、高音質音楽CDのマスタリングと製作管理プロセスのひとつ。
「この世にひとつしかないオリジナルマスターに込められた音を最高の状態で届けたい」という理念の元に開発されたCD制作過程の高精度な音質管理プロセス。あくまでもCD規格内での高音質化技術であり、よって既存の全てのCDプレーヤーで再生可能である。次世代CDとは関連性は無い。
歴史
xrcdは、1996年ビクターエンタテインメントの米国現地法人JVC Music Inc.(LA)のプロデューサーと日本ビクター株式会社ディスク事業部(当時)のJVCマスタリングセンターによって誕生した。そのため最初の発売xrcdは、米国で発売されている。しかし、そのプロセスへの評価と共に音質評価が高く、日本へは人気が逆輸入される形で広がり始めた。当然、通常盤より高価であったが、オーディオ専門店からの評価が高く、CDショップよりもオーディオ専門店で多く販売されている。また、多くのレーベルが賛同し、国内初のレーベルとなるTBM(Three Blind Mice)をはじめ、レーベルの枠を越えた高音質CDとして認知が広まっていった。 1998年、音質変化要因排除技術であるK2インターフェースがDigital K2に進化するとともにxrcd2となる。 2002年、24bitK2 ADコンバーター&K2スーパーコーディングの開発と水晶の1万倍という精度を誇るルビジウム・マスタークロック、より高精度なカッティング制御が可能になるDVD-K2 Laserによりxrcd24に進化した。 xrcd24には、アナログのオリジナルマスターから24bitK2 A/Dコンバーターでダイレクト変換してマスタリングされるxrcd24 super analogと、デジタルマスターから制作するxrcd24 refined digitalの2種類がある。また、それまでオリジナル・アナログマスターにこだわり続けていたxrcdもPCM-1630による3/4のオリジナル・デジタルマスターから20bitグレードの高品位デジタル信号に再生成し制作したものも認可。これにxrcd2の名称を使用している。そのためxrcd2は時期により内容が異なる結果となった。2008年にはスーパー・ハイ・マテリアルCDの技術を採用したSHM-CDエディションが発売されている。
内容
xrcdの音源はあくまでもオリジナルのアナログマスターテープにこだわった。一般的に日本におけるソフト制作は、ライセンスを受けたセカンドソースのマスターで行われている。オリジナルのマスターは、原盤権のある国にしか存在しない。オリジナルマスターから制作すること、熟練したマスタリングエンジニアの高度な感性やノウハウ、ビクターの持つデジタル高音質化技術(K2インターフェース、128倍オーバーサンプリングの20bitK2 A/Dコンバーター、20bitK2 Super Coding等)による高音質デジタル変換技術。それに加えてディスク事業部の高品位製造技術を融合させることで、開発理念である「この世にひとつしかないオリジナルマスターに込められた音を最高の状態で届けたい」を実現するために製品化された。 ここで重要なのが、レコーディングスタジオ、マスタリングスタジオ、ディスク製造工場を同一の会社でコントロールできる事である。いかに優秀なレコーディングができても、いかに高品位なマスタリングができても、量産プレスされたCDの品質が追いついていかなければミュージシャンが納得できる音質の作品にはならない。 当時のデジタルオーディオマスターテープは、SONYのPCM-1630を使用した3/4インチのU-Maticビデオテープが主流であったが、xrcdではSONYのPCM9000シリーズをカスタマイズして導入。5インチのMOディスクにリアル20bit/44.1kHzの信号を記録しディスク製造部門に渡している。ディスク製造部門では、そのMOマスターから取り出したリアル20bit/44.1kHzの信号を20bitK2 Super Codingにより20bitの信号要素を含む16bitデータにエンコードし、EFM(Eight to Fourteen Modulation)変調をかけK2 Laser Cuttingに導かれる。このK2 Laser Cuttingによりジッター等の音質変化要因が徹底的に排除され、ラッカーが塗布されたガラス原板に記録するのだが、カッターマシンも選別されている。最も偏芯が少なく安定したカッターマシンだけがxrcdのカッターマシンとされた。CDの内周に「IFPI L232」と書かれたxrcdを所有されている方は大切にされた方が良い。後に惜しまれながらそのカッティングマシンは寿命を向かえ代替わりをするが、品質維持は難しかったようだ。さらにマスタリングやカッティングの際には専用室を用い、専用の電源変圧器を備え、最も電源系ノイズが少ないとされる深夜2時頃にスタジオの照明やエアコンまで切って行われる程の念の入れようで、そうしてできたガラス原板がxrcd Glass Masterとなる。それにニッケルメッキをし、はがしたものがスタンパーとなるわけだが、ここにビクターが長年培ったアナログレコードのスタンパーを制作してきたメッキ技術が活かされている。そうしてテスト板を作成、マスタリングエンジニアにおけるMOマスターとのコンペア(音質比較確認)を行い、音質レベルがエンジニアの納得いかないものであれば再度カッティングからやり直す事になる。それらをクリアして初めて商品として出荷される事になる。正に徹底した音質管理プロセスであると言えよう。初期のxrcdには、ラベルが必要最小限しか印刷されていない。印刷による音質変化を嫌ったからである。その後、印刷しても音質変化が起こりにくい工夫が導入された。 xrcdの機材は、常に最高品位を求めモディファイ(改良)が加えられており、現在は24bitのA/Dコンバーターや超高精度ルビジウムマスタークロックの導入など進化を続けている。
補足
通常版CDは数多くのタイトルの量産に対応する為、製作時に音質に重要な影響を与えるマスタリング工程が大幅に自動化されている。この場合、処理に要する時間は2時間程度と極めて迅速であるが、様々な環境で録音された音源を一律に処理してしまうため、音楽的バランスを欠く危険性が高い。また、プレス工場との連携を図るのが困難なため、最終プレスにおける品質確認ができない場合がほとんどである。