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Extended Resolution Compact Disc

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xrcdeXtended Resolution Compact Disc)は、ビクターが1996年に発表した、高音質音楽CDマスタリングと製作管理プロセスのひとつ。

「この世にひとつしかないオリジナルマスターに込められた音を最高の状態で届けたい」という理念の元に開発されたCD制作過程の高精度な音質管理プロセス。あくまでもCD規格内での高音質化技術であり、よって既存の全てのCDプレーヤーで再生可能である。次世代CDとは関連性は無い。 最初のxrcdは、ビクターエンタテインメントの米国現地法人JVC Music Inc.(LA)のプロデューサーと日本ビクター株式会社ディスク事業部(当時)のJVCマスタリングセンターによって誕生した。音源はあくまでもオリジナルマスターにこだわり、日本にあるライセンスを受けたセカンドソースのマスターではなく、原盤権のある本国のオリジナルマスターから制作することと、熟練したマスタリングエンジニアの高度な感性やノウハウ、ビクターの持つデジタル高音質化技術(K2インターフェース、20bitK2 A/Dコンバーター、20bitK2 Super Coding等)、ディスク事業部の高品位製造技術を融合させることで、開発理念である「この世にひとつしかないオリジナルマスターに込められた音を最高の状態で届けたい」を実現するために製品化された。当時のデジタルオーディオマスターテープは、SONYのPCM-1630を使用した3/4インチのU-Maticビデオテープが主流であったが、xrcdではSONYのPCM9000シリーズをカスタマイズして導入。5インチのMOディスクにリアル20bit/44.1kHzの信号を記録しディスク製造部門に渡している。ディスク製造部門では、そのMOマスターから取り出した20bit/44.1kHzの信号を20bitK2 Super Codingにより20bitの信号要素を含む16bitデータにエンコードし、EFM(Eight to Fourteen Modulation)変調をかけK2 Laser Cuttingに導かれる。このK2 Laser Cuttingによりジッター等の音質変化要因が徹底的に排除され、ラッカーが塗布されたガラス原板に記録するのだが、カッターマシンも選別されている。最も偏芯が少なく安定したカッターマシンだけがxrcdのカッターマシンとされた。CDの内周に「IFPI L232」と書かれたxrcdを所有されている方は大切にされた方が良い。後に惜しまれながらそのカッティングマシンは寿命を向かえ代替わりをするが、品質維持は難しかったようだ。さらにマスタリングやカッティングの際には専用室を用い、専用の電源変圧器を備え、最も電源系ノイズが少ないとされる深夜2時頃にスタジオの照明やエアコンまで切って行われる程の念の入れようで、そうしてできたガラス原板がxrcd Glass Masterとなる。それにニッケルメッキをし、はがしたものがスタンパーとなるわけだが、ここにビクターが長年培ったアナログレコードのスタンパーを制作してきたメッキ技術が活かされている。そうしてテスト板を作成、マスタリングエンジニアにおけるMOマスターとのコンペア(音質比較確認)を経て初めて出荷される。初期のxrcdには、ラベルが必要最小限しか印刷されていない。印刷による音質変化を嫌ったからである。この恐ろしく手間とお金、想いがこもったxrcdは、海を越えて日本に逆輸入される形で広がり始めた。当時、逆輸入盤として発売され、通常盤と比べても若干高価格であったもののオーディオ専門店からは評価が高く、後に発売される国内初のレーベルとなるTBM(Three Blind Mice)をはじめ、レーベルの枠を越えた高音質CDとして認知が広まっていった。 1998年、音質変化排除技術であるK2インターフェースがDigital K2に進化するとともにxrcd2に進化。完成度を高めていった。次なる進化は、2002年。24bitK2 ADコンバーター&K2スーパーコーディングの開発と水晶の1万倍という精度を誇るルビジウム・マスタークロック、より高精度なカッティング制御が可能になるDVD-K2 Laserによりxrcd24に進化を遂げた。xrcd24には、アナログのオリジナルマスターから24bitK2 A/Dコンバーターでダイレクト変換してマスタリングされるxrcd24 super analogと、24bitデジタルマスター等から制作するxrcd24 refined digitalの2種類がある。また、それまでオリジナル・アナログマスターにこだわり続けていたxrcdも3/4のオリジナル・デジタルマスターから20bitグレードの高品位デジタル信号に再生成し制作したものをxrcd2として残している。2008年にはスーパー・ハイ・マテリアルCDの技術を採用したSHM-CDエディションが発売されている。

補足

通常版CDは数多くのタイトルの量産に対応する為、製作時に音質に重要な影響を与えるマスタリング工程が大幅に自動化されている。この場合、処理に要する時間は2時間程度と極めて迅速であるが、様々な環境で録音された音源を一律に処理してしまうため、音楽的バランスを欠いたり、プレスまでの過程に必要以上の劣化が発生する危険性が高い。

関連項目

外部リンク