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仮執行宣言

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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仮執行宣言(かりしっこうせんげん)とは、財産権上の請求権に関する判決において、判決確定前であってもその判決に基づいて、仮に強制執行をすることができる旨の宣言(裁判)である(民事訴訟法259条)。

また、支払督促手続においても、債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申し立てをしないときには、債権者の申立てに基づき仮執行宣言が付される(民事訴訟法391条)。

この項では、判決における仮執行宣言のみを扱う。支払督促における仮執行宣言は、支払督促の項を参照。

意義

判決は、確定した後に執行力(強制執行をすることができる力)が発生するのが本来である。しかし、日本の民事訴訟は、三審制を採用しているため、判決確定までに一定の時間がかかるので、確定までの間、第一審判決の勝訴者の権利が全うされない(特に仮執行宣言制度がない場合、一審で敗訴した被告が控訴上告で裁判を引き延ばすことも横行しかねない。)。そこで、財産権上の請求権に関する判決について、仮執行宣言を付すことができることにして、上記弊害を除去し、権利者の保護を図っている。

要件等

  • 財産権上の請求権に関する判決
財産権上の請求権とは、例えば、金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求権、不法行為に基づく損害賠償請求権などである。
身分関係に関する訴訟も民事訴訟に含まれるが、仮執行を認めると身分関係が不安定になってしまうため、仮執行宣言の対象からは外されている。
また、意思表示を命じる判決(例えば被告に対して、一定の内容の登記手続を命じる判決)は、確定のときに被告が当該意思表示をしたとみなされるため、理論上は執行の余地がないこと、仮執行宣言を認めた場合、意思表示があったりなくなったりすることによって法的関係が不安定になることなどから、意思表示を命ずる判決(登記手続を命ずる、仮登記手続を命ずる等)には仮執行宣言を付けられないと解釈されている。
  • 申立てにより又は職権で
条文上は、仮執行宣言は当事者の申立てがある場合のほか、裁判所が職権でも付すことができる。しかし、当事者が申し立てていないのに仮執行宣言の必要があることは考えにくく、通常の民事事件(後記の例外を除く。)において、職権で仮執行宣言を付す例はほとんどない。
手形又は小切手による金銭の支払の請求に関する判決においては、裁判所は職権で仮執行宣言を付さなければならない(民事訴訟法259条2項)。これは、手形及び小切手の迅速な決済を担保するための、政策的な考慮によるものである。

効果

  • 仮執行の宣言を付した判決は、民事執行法上の債務名義となり、強制執行が可能となる(民事執行法22条2号(支払督促の場合は同条4号))。

まとめ

仮執行宣言の原則

仮執行宣言は、係属中の裁判に対してのみ効力を有する債務名義である。

 控訴により原判決の主文の効力が取消されるので上級審判決の主文に仮執行宣言の記載 がなければ債務名義とはならない。上級審において確定判決となった場合は仮執行宣言 は無効となる。=法務省民事局参事官室に確認 ○数字は条項の番号である。

  • 1仮執行宣言とは=民訴法第259条①・④項
    • ① 財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
    • ④ 仮執行の宣言は、判決の主文に掲げなければならない。
  • 2 1審判決の仮執行宣言
 第一審判決は告知により主文の規範力が生じるが、

控訴によりその主文の効力は取り消される。控訴審判決の主文 に仮執行の宣言の記載がなければ、控訴審判決の主文により第一審判決の仮執行宣言は取り消されるので、控訴審判決以後は第一審の裁判書により強制執行は実施できない。=裁判所法4条・民訴法114・116・119・122・250・259‐4・260・294・310・323・341条項

  • 3 仮執行宣言の失効(民訴法第260条①項)
    • ① 仮執行の宣言は、その宣言又は本案判決を変更する上級審の判決の言渡しにより、変更の限度においてその効力を失う。

*上級審の判決の主文に仮執行宣言の記載がなければ、仮執行宣言は失効する。

  • 4 一審判決の仮執行の宣言=民訴法第294条
    • ① 控訴裁判所は、一審判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。
  • 5 控訴審の仮執行宣言=民訴法第310条
    • ① 控訴裁判所は、金銭の支払の請求(第二百五十九条第二項の請求を除く。)に関する判決については、申立てがあるときは、不必要と認める場合を除き、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、控訴裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。

* 控訴審判決の主文に仮執行宣言の記載がなければ、第一審裁判の仮執行宣言は失効する。=裁判所法4条

  • 6 上告審の仮執行の宣言=民訴法第323条
    • ① 上告裁判所は、原判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。

* 仮執行の宣言は決定書の主文にその旨を掲げなければならない。当該裁判が確定判決になった場合は仮執行宣言は無効となる。

  • 7 上級審の判断は下級審を拘束する
 上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について

 下級審の裁判所を拘束する。=裁判所法4条

  • 8 上級審判決書・係属中裁判所の仮執行宣言付裁判書でなければ債務名義として有効でないので、強制競売開始決定の申立をする事が出来ない。=民事執行法22‐2・25条号

=以上、法務省民事局参事官室・最高裁判所に確認--219.44.113.111 2010年3月13日 (土) 09:35 (UTC)