根管長測定器
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根管長測定器(こんかんちょうそくていき)とは歯科治療における抜髄、感染根管処置の治療の際に用いる測定装置。電気的根管長測定器とも言われる。歯科領域において日本で開発され世界的に普及した技術の一つである[1]。
概要
抜髄、感染根管処置の治療にあたっては根尖部までしっかりと感染物質を除去し、その後、充填材により最終的に根尖部まで綿密に充填すべきというものが現状の歯科医学の考え方である。それにあたって湾曲をしている根の正確な長さの把握が不可欠である。根管長測定器は口腔粘膜と根管内に挿入した測定電極の先端との間のインピーダンス値を測定することにより根の長さを把握する装置である。口腔内の状況により一定の誤差が生じるためX線写真での測定、平均歯根長、手指の感覚、ペーパーポイントなどと組み合わせて用いる事が推奨される。
開発の歴史・主な製品の推移
1955年、東京医科歯科大学歯科保存科の鈴木賢策、砂田今男らが当時術者の勘によって測定されていた歯の長さを誰もがいつでも同じように測定する事を目的とするために、歯の電気抵抗を測定して歯の長さを調べる方法の研究を開始した[2][1]。この研究の結果は、1958年に口腔病学会雑誌、1962年にJDRにて報告され、さらに1965年に交流で正確に測定する方法が報告されると、小貫医器がRoot Canal Meterとしてこれを製品化した[2]。1978年に電気的根管長測定検査が保険適応され、製品としては1980年代に単一周波数測定器であるエンドドンティックメーターSIIが発売され、根管長測定器が普及を開始した[3]。エンドドンティックメーターは根管内が乾燥状態でなければ精度よく測定できないという欠点があり、その後その欠点を補った二種類の異なる周波数を用いた測定器であるルートZX、アピット、ジャスティなどが発売された。その後は各社とも精度の向上、小型化などの開発を競っている。商品シェアはモリタのルートZXが米国シェア69.2%[4]、国内シェア45.2%[5]で国内国外ともにシェアトップである。
仕組み
口腔粘膜と根管内に挿入した測定電極の先端との間のインピーダンス値は、人種、年齢、歯種による差がほとんどなく、一定の値(6.5kΩ)をとるという性質を利用している。
使用方法
根管長測定器より伸びた対極を口角部に、関電極をファイルに取り付け、根管部へ挿入しながら測定を実施する。
特徴
- 根尖孔が吸収されても正確な測定が可能。
- 根管を拡大しながらの測定が可能。
- パーフォレーション(偶発的穿孔:accidental perforation)の即時診断が可能。
欠点
- 根尖孔が開いた歯では正確な測定が困難。
- 歯肉への電流リークは短めの測定を誘発する。
主な製品
- ルートZXmini(モリタ)
- デンタポートルートZXモジュール(モリタ)
- ジャスティ3(ヨシダ)
- アピット7(オサダ)
- コスモアイキュア(コスモデンタル)
- ソノエクスプローラー(Sono-Explorer MKII Junior)(製造:マチダ、販売:林歯科商店。現在は販売終了)
- エンドドンティックメーターSII(小貫医器)
- ルートキャナルメーター(小貫医器)
- Bingo-1020(VDW)
- Neosono MC
脚注
- ^ a b “東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座歯髄生物学分野沿革”
- ^ a b 砂田今男「電気的根管長測定器の歴史」『歯界広報』第41巻第6号、歯界広報社、東京都、1980年12月、4-7頁。
- ^ “特許審決データベース”
- ^ 2008年SMDレポート
- ^ “2005~2007年の国内シェア45.2% R&D”